今回は、漫画『BEASTARS(ビースターズ)』を紹介します。
ジャンルとしては「動物版青春ヒューマンドラマ」になります。
登場人物はすべて「人間以外の動物」それも、擬人化された動物になります。
あらすじ
全寮制の中高一貫校チェリートン学園で、アルパカの男子高校生が何者かに”食殺”される。
肉食動物と草食動物が共存するこの世界では、動物を食べるのはタブーであり、犯罪行為となる。
主人公であるハイイロオオカミのレゴシは、その食殺事件の真相を追うことになる。その中で周囲の動物たちとの青春模様が描かれていく。
肉食動物と草食動物の関わり
「男」と「女」とか「マジョリティー」と「マイノリティー」とか、対立する二国間とか
そういう対立構造を軸とした人間ドラマ漫画は数多くあるけれども
「肉食動物」と「草食動物」言い換えれば「食うもの」と「食われるもの」を基底にした人間(動物)ドラマっていうのは今までなかったんじゃなかったかと思います。
自分の食欲と恋心の間で悩んだり
肉食が法律で禁じられた世界にもかかわらず
世間の暗黙の了解として、草食動物の肉を売る「裏市」なんてものが存在していたり。
徹底的に「肉食と草食」の関係にこだわりながら話が進んでいきます。
設定が細かい
なんといっても設定が細かい。
実際にあるお店の名前なんかも、もじっていて
無印良品→無印獣品 UNIQLO→ANIQLO
こういうのが無数に出てきます。
世界のルールやマナーの描写もところどころ出てきていて
小動物は壁際を歩く
肉食獣は草食獣に道を譲るのがマナー
肉食獣の大人は裏市で本能抑制のストレスを発散
他にも数多く・・・
こういった設定を丁寧に随所に散りばめていくことで
斬新な世界観にしっかり入り込めるようにされています。
思春期をストレートに描く
高校生の思春期というものをストレートに、かつシンプルに書いています。
設定が作り込まれまくってる分、
登場人物の行動や思考がシンプルに思春期の人間臭さを匂わせてきます。
主人公のレゴシは、オオカミであるにもかかわらず、ウサギの女の子に恋をしています。
自分はウサギの女の子に対して、純粋な恋心があるのか、それとも食欲を恋と勘違いしているのかを
ずっと悩んでいます。
世間的には肉食と草食の恋愛は、法律で認められてはいるものの、奇異の目で見られることになります。
自分の欲求、自分と世間、複雑に絡まった糸を、自身が成長していくことで解いていく様を
やはり丁寧に描いています。
生き方の本質を問う
自分はどう生きるべきか?何を信じたらいいのか?本当の正義とは何か?
世間と自分のギャップにどう折り合いをつけたらいいのか?
丁寧に丁寧に作り込んできた世界観をベースに、作者は本質的なことを問いかけてきます。
物語の中で、肉食獣も肉食獣で思うことがあるようです。
肉食の性を出すことが社会的にタブーされていることに対して、抑圧と捉えている動物もいたりする。
その抑圧とどう向き合うか?
草食獣は草食獣で、食べられるかもしれない恐怖とどう向き合うのか?
食べる・食べられるの関係ではなくとも、
人間社会でも何かに置き換えられそうな問題提起に感じました。
関連作品
BEAST COMPLEX
『BEASTARS』の短編集です。3巻あります。
パルノグラフィティ
実は、作者である板垣巴留さんは『グラップラー刃牙』の作者板垣恵介の娘さんらしいです。
そんな家庭を描いた漫画も出ています。
SANDA
サンタになれる特殊能力をもった少年が同級生の女子に翻弄されながら波乱の学園生活を送っていく話。こちらも板垣巴留さんの作品。『BEASTARS』以来の長編漫画です。
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