今回は、漫画『最果てのパラディン』について。
元々は小説投稿サイト『小説家になろう』に投稿されているライトノベルです。
いわゆる「なろう系」の「転生もの」で、このジャンルは今までにまぁまぁ読んできました。
言い方悪いですが、この手のジャンルはピンキリありすぎて読み応えがないものも多い。
ただ、それでもいいものがないかと探しているうちに出会った作品です。
あらすじ
引きこもりとして無為な人生を過ごし、後悔して亡くなった主人公は記憶を保持したまま異世界に転生する。ウィリアム(通称:ウィル)と名付けられた赤ん坊は、数百年前に人の絶えた廃墟の街で、生前は英雄として知られた3人の不死者ブラッド、マリー、ガスに育てられる。今度こそ悔いのない人生を送ることを決意したウィルは、スケルトンの剣士ブラッドからは武術を、ミイラの神官マリーからは一般常識と信仰を、ゴーストの魔法使いガスからは学問と魔法を学び成長していく。
最果てのパラディン – Wikipedia
テーマと雰囲気
物語の根底に流れる大きなテーマは
「信仰」「生」「愛」の3つだと感じています。
こういうテーマだと話が重くなりがちですが
物語の全体に温かさや優しさがあり、
話のテンポも軽快で、読者を飽きさせない工夫も随所に見られます。
しかし同時に静謐さ、凛とした空気が漂ってもいます。
なかなか出せない空気感をしっかり出せているなという印象。
とある神との対話
この作品世界は多神教で、信仰と生活が密になっており
しかも神々や信仰が割と具体的な形を伴って表出します。
(夢に出てきたり、神がカラスの姿で語りかけてきたり、豊穣の神にパンを欲しいと願ったらパンが出てきたり、気に入らないことがあると頬をつねってきたり、etc…)
複数の神が存在する世界であるからか、善神だけでなく悪神と呼ばれる神もいます。
悪神は主人公であるウィルにとっては敵ではあるのですが、ウィルの手強さ故にその悪神に気に入られています。
そんな神とウィルが対話する場面がありました。
ウィルの信仰心とその信念、敵へのリスペクトを中心にその対話は進んでいくのですが
その場面を読んだ時に
「生半可にこんなテーマに手をつけたんじゃないんだな」という
作者の覚悟が垣間見えたような
そんな印象を受けました。
親子愛、師弟愛
神との関わりではなく、ウィルを育てた親たちとの関わりも非常に丁寧に描かれています。
物語の序盤でウィルを最強パラディンに育て上げていく役割ではあるのですが
親子愛、師弟愛を一つ一つのストーリーで丁寧に描いているのもあって
別れの場面では、筆者号泣していました。
独り立ちして、ウィルが師匠の立場になる日もやってくるのですが
導く者としての苦悩を通して、逆の立場から見てどうだったのか?を見られるのも、序盤との対比となって面白かったです。
ウィルはどう生きるか?
みんなのリーダーとして求められるリーダー像や、自分の信仰者としての信念と
等身大の自分との間で揺れ動くウィルの葛藤が
「自分はどう生きるか?」という根本的な自問自答へとつながっていき、一つの答えを導いていく過程が
一人の人間として「我々の中にもある」話で共感を誘うポイントではあった気がします。
人間描写の深さ
作中では、とにかくウィルが自分も他人も観察をしている場面が多いです。
それだけ人間描写を深掘りしているということですね。
その人やその集団が、どうしてその行動を取るのか?どういう性格なのか?を
観察の場面で言葉を尽くして説明しているのがこの作品の特徴の一つと言っても過言ではないと思います。
書籍紹介
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