映画「侍タイムスリッパー」について語る

侍タイムスリッパー レビュー 映画
侍タイムスリッパー レビュー

映画の概要

自主制作映画

「侍タイムスリッパー」は、未来映画社という小さなチームによって制作された自主制作映画です。初めは池袋の小さな映画館での単館上映から始まりましたが、SNSや口コミで話題が広がり、全国での上映が実現しました。カナダの国際映画祭で賞を受賞したことも、注目度を高める要因となりました。

この映画は、数年前に大ヒットした自主制作映画「カメラを止めるな!」(通称:カメ止め)の再来とも言われています。2024年8月に1館のみでの上映から始まり、9月には全国100館以上、10月現在は、200館以上の上映が決まっているそうです。

あらすじ

幕末の会津藩士・高坂新左衛門が主人公。ある夜、長州藩士との対決中に雷に打たれ、現代の時代劇撮影所にタイムスリップしてしまいます。現代日本を放浪する中で、江戸幕府の滅亡を知り愕然とする新左衛門。怪我をして倒れたところを、映画監督を目指す若い女性助監督に助けられます。その後、時代劇の斬られ役として第二の人生を歩むことを決意するという展開です。

映画の制作背景

撮影場所と協力者

本作は、時代劇撮影の本場である京都の東映撮影所で撮影されました。通常、自主制作映画では使用が難しいそうです。時代劇関係者たちが、この映画は面白そうだから、是非とも実現させたい!ということで東映撮影所とかけあってくれたそうです。

この映画は「5万回斬られた男」として知られる福本さんへのリスペクトが込められています。当初は福本さんを主役にする予定だったそうですが、残念ながら数年前に亡くなってしまったため叶いませんでした。

主演の山口馬木也さんについて

主演は山口馬木也さんが務めています。山口さんは「剣客商売」や「鬼平犯科帳」「水戸黄門」などに出演。特に水戸黄門では夜叉王丸という忍者の役で出てました。私、水戸黄門は見てました。里見浩太朗さんに変わるちょっと前くらいから、最終回まで毎週見てましたね。夜叉王丸もなんとなく覚えてます。

映画のテーマ

歴史とエンターテインメントの融合

本作は歴史的な背景説明を最小限に抑え、あくまでエンターテインメント作品として楽しめるよう構成されているので、歴史が苦手な人でも十分に楽しむことができると思います。ただ、歴史を知っていたら知っていたで、色々考察はできますね。

時代設定について

映画の時代設定は2000年代かなと。携帯電話がガラケーだったり、古い映画のビデオが登場したりするので。2000年代と言えば、ちょうど時代劇が下火になり始めた頃の日本。

侍の魂と時代劇の重要性

映画内では時代劇の衰退が語られますが、それと同時に侍の魂を現代に伝える使命感が描かれています。作品全体を通して、時代劇への敬意と、その魂を忘れないでほしいという思いが感じられます。

ネタバレ考察

新左衛門とライバルの関係

物語の中で重要な役割を果たすのが、主人公新左衛門のライバルである長州藩士、風見という人物。実は風見も新左衛門より30年前にタイムスリップしており、10年前に一度、時代劇を捨てていましたが、新左衛門を見つけたことで再び時代劇を撮ろうとしている。

新左衛門にとって、時代劇は「侍の魂が宿るべき世界」と、ニアリーイコールになっています。そのため、時代劇を捨てた風見に対して強い怒りと失望を感じていました。
時代劇をなぜ捨てた?刀をなぜ捨てた?侍をなぜ捨てた?と。
新左衛門たちが守ってきた幕府を倒した側の人間である風見。その立場の人間が時代劇を、つまり侍としての魂を捨ててしまうのは無責任じゃないか?と。
お前も侍であったのならば、新しく作った世に、侍の魂を伝える使命があるんじゃないか、と新左衛門は憤りを感じているわけです。

ラストシーンの意味

ラストシーンでは、新左衛門と風見が真剣で戦うことになります。これは単なる決闘ではなく、侍の魂を現代に伝えるための象徴的な行為です。新左衛門は、壮絶な最期を遂げた会津藩の仲間たちの気概を知り、偽物の侍(斬られ役)として生きることに葛藤するわけです。その葛藤を経て、真剣での戦いを通じて、時代劇という媒体の中で侍の魂を後世に伝えていく決意をするのです。

真剣で戦うということは、相手がいて初めて成り立つことなので、その使命を、風見に対して共に成し遂げようではないか、と暗に言っているのが、真剣で戦うということの意味でもあるのです。だからこそ、真剣でやる決意を新左衛門から聞いたときの風見は、本物の侍である新左衛門から、侍として認められた上で、共に使命を果たそうと誘われているわけですから、涙を流したのです。

このシーンには、作品の制作者たちの思いもひしひしと感じられます。時代劇の中にある魂を残していきたいという願いが、メタ的な視点でも表現されているのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました